渡辺克彦さん・故郷に恩返し 

(「ネットワークNHK」 2月号から)
 渡辺克彦さんは、定年を迎えた大分局から、定年後も引き続き番組を制作してほしいとの依頼があり、即座に承諾しました。それは、自分が育った故郷大分を、番組を通してもっと知ってもらいたい、それは、自分を育ててくれたNHKへの恩返しでもあると思ったからだそうです。

 番組は週1回、6~7分のリポートで、夕方のローカル番組で放送されます。現在放送中のコーナー「おおいた歴史ロマン」は、県内の史跡を地元の郷土史家と巡るものです。
 その制作方法は、ディレクターでありながら、カメラマン・ナレーター・編集マンを渡辺さん一人でこなすという忙しさ。ですから、番組の中では、取材相手への質問やナレーションの声を聞くことは出来ますが、顔は一切出てきません。
 ユニークなのは、ナレーションの口調。ゆったりとしたテンポ、きりっとした響く声、それは、なんと両親が亡くなってから日課としている「読経」からくるものだそうです。
 実は、渡辺さんのお父さんは、高名な歴史学者・大学教授で、著書もたくさんあります。その影響でしょうか、渡辺さんは歴史に対して造詣が深く、番組では、地元でも知られていない歴史を掘り下げ、コーナーはすっかり定着し好評です。何よりも渡辺さんが生き 生きと楽しそうです。
 大分県は、神仏習合で知られる宇佐神宮、石仏の宝庫・国東、キリシタン大名・大友
宗麟と、興味深い歴史や遺跡も多く、今後もリポート制作を通して、この歴史を出来るだけ多く、息長く紹介してもらいたいと思います。
 渡辺さんには長く続く趣味が二つあります。クラシックギター50年、卓球35年です。この二つからとった「卓弦(たくげん)」という雅号まで持っているくらいです。卓球で鍛えた足腰は、番組作りにも役立っています。目指すは「90歳代で大分県卓球チャンピオン」です。
 ギターでは、音楽ボランティアグループの代表を務めています。当初は、プロのギタリストの指導を受け、同好会を結成。さらに知り合った方たちと男声合唱団も結成し、ハートアンドハーモニー」というボランティア組織を作りました。老人ホームや病院、町内のサロンなどで演奏・合唱を披露しています。
 この様な活動を通して、人と人とのつながりの大切さを身をもって感じたといいます。
 最後に渡辺さんが大切にしている句を紹介します。
「人生、恨むなかれ、人の識るなきを 幽谷深山、華、自から紅なり」
(文・九州旧友会 安東 純孝)

昭和19(1944)年大分県生まれ。昭和42年入局。以降、ディレクターとして富山・浜松・大分・福岡・東京で勤務。
平成16年退職。現在、大分局のリポート番組を制作しながら、音楽ボランティアとして活躍。