久保田豊さん・「民謡は地域の応援歌」

(「ネットワークNHK」7月号から)

軽快な民謡調のテーマソング。そしてアナウンス。「民謡をどうぞ。東北の皆さんこんにちは…」  毎週金曜日、昼の12時半になると、25分間、民謡2がラジオから流れてきます。ある時は季節感にあふれた民謡。ある時は農家の人を助けて働いた馬や牛の民謡。東北のローカルで、何と60年、2千6百回以上も続いている長寿番組です。
 今この番組の企画構成を担当しているのが、久保田豊さんです。NHKを卒業した後、18年も続けています。
 久保田さんが入局して鶴岡局に赴任したのは昭和34年。当時、東北は大変な民謡ブームでした。「NHKのど自慢全国大会・民謡の部」では、日本一が東北から続出していました。そんなこともあり、久保田さんの33年間のNHK生活は、鶴岡でも、東京でも、仙台でも、まさに民謡番組の制作一筋でした。ラジオでは、「民謡をたずねて」「日本の民謡」「民謡の旅」、テレビでは、「若い民謡」「ひるの民謡」「民謡をあなたに」などなど。久保田さんは、民謡には本当に詳しく、まさに民謡の生き字引といえる人です。
 東北は民謡の宝庫です。そして民謡好きな人がたくさんいます。数多くの民謡が歌い継1がれています。その地域ゆかりの民謡を、全国から愛好家が集い、のどを競い、優勝者を決める「○○節全国大会」などが、東北のおよそ40の市町村で、毎年行われています。ふるさとの伝統の継承と地域を元気にすることを目指した町おこしです。久保田さんはこれらの大会の運営をサポートしたり、審査員を務めたりして、大会を盛り上げています。
 久保田さんは地元・鶴岡の出版社からの依頼で、民謡の本を書きました。そのタイトルは、かつて自分が担当し、全国的な民謡ブームの火付け役にもなった番組「民謡をあなた3に」です。本には、民謡の曲名は、下に「節」「唄」「甚句」「音頭」などが付いているが、うち、半数が「節」、25%が「唄」、20%が「甚句」「音頭」だとか、江戸時代から明治にかけて、九州の「ハイヤ節」が北前船に乗って日本全国の民謡に大きな影響を与えたことを、「ハイヤ菌のまん延」と表現して親しみやすく記すなど、興味深いことがたくさん書かれています。何といっても、一番伝わってくるのは、民謡への深い愛情です。
 久保田さんは「民謡は地域の応援歌」だと確信しています。とりわけ大震災に打ちのめされた東北です。民謡は人々の心を元気にし、安らぎを与えるはずと信じて、今日も忙しく活動を続けています。
(文・東北旧友会 黄海 富寿雄)

昭和10(1935)年生まれ。昭和34年入局。平成4年退職まで、鶴岡・東京・仙台で番組制作に従事。

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