山崎俊一さん「番組作りの心を今も」

(「ネットワークNHK」4月号)

1 月に一度、東京駒場にある東京大学教養学部の広々とした構内の一角に、力強い男たちの歌声が響きます。
  嗚呼(ああ)玉杯に花うけて 緑酒(りょくしゅ)に月の影やどし
  治安の夢に耽(ふ けり)たる 栄華の巷(ちまた)低く見て・・・
戦前なら誰もが知っている旧制第一高等学校の寮歌。歌うのは一高の寮歌を中心に。旧制高校の寮歌を歌い継ぐ詠帰会(えいきかい)の会員たちです。
 その中の一人が元NHKディレクターの山﨑俊一さん。現役時代に旧制高校をテーマとする番組を作ったのが縁で3年ほど前にこの会に参加しました。旧制姫路高校出身で84歳の山﨑さんは、「知的な刺激があり、ストレス解消にはうってつけです」と話しています。
 山崎さんは、昭和30年NHK入局以来62年に定年を迎えるまで、「ある人生」「70年代われらの世界」、「激動の記録」、海外取材シリーズ「祈りのある生活」など、更に定年後も「ホーティキューの結婚」「安野光雅・ファーブル昆虫記の旅」ほか数多くの番組を送り出し2ています。
 その中で第二次世界大戦中ドイツの潜水艦に乗り組んだ、日本海軍の技術士官が残した遺書を題材にした「Uボートの遺書」は、昭和45年度の芸術祭大賞を受け、イタリア賞のテレビドキュメンタリー部門にも出品しました。
 山﨑さんは、この番組のために取材したベトナム南部地方を最近あらためて訪ね、南ベトナム最大の米軍基地があった町ダナンやベンハイ川、古都フエなど、かつての激戦地を見て歩き複雑な思いに浸りました。3
 「灯火を消した米軍輸送機でダナンに着陸したのはスリルがありましたね。基地の建物はその夜のうちに北側のロケット砲撃で全焼しました」と、ベトナム戦争当時を感慨深く回想しています。
 こうした海外取材の際には、NHKの総支局で働く地元のスタッフの有形無形のバックアップが極めて大切であることを、山﨑さんは身にしみて感じ取っており、その人たちの名前を脳裏に刻みつけています。
 宗教行事に詳しく取材のアレンジが完璧だったニューデリーのカンナさん、10時と3時のスープを忘れないロンドンのバジョット夫人、交通事故の後も車椅子で頑張ったニューヨークのエルケ・タイタスさんたちの思い出は忘れられません。
4 また昭和27年、ヘルシンキ五輪の中継に派遣されその帰途、パリで客死された元NHKアナウンサー和田信賢さんの遺体を、火葬する習慣のないフランスで何とか荼毘(だび)に付し、東京に送り返したのはパリ総局の故ボロスキー夫人でした。存命の人たちとは今でも文通を絶やさず、旧交を温めています。
 山﨑さんは、現在毎月1週間ほど岡山県の実家に帰り、草刈りや植林の手入れに汗を流しています。ただそうした時間の中でも、NHKの放送の在り方が問われるような時には、山﨑さんはNHKに対して、「文化の創造と継承を放送の使命とすることを決して忘れないでほしい」と強く望んでいます。

(文・東京旧友会  菅間 昭)

昭和5(1930)年生まれ、昭和30年入局。岡山局に配属の後、教養番組、NHKスペシャル番組などの番組制作に従事。昭和62年退職。

山崎俊一さん「番組作りの心を今も」 への3件のフィードバック

  1. 佐藤 毅 のコメント:

    久しぶりに御元気そうな満84歳の氏のスナップに接し、嬉しく思いメールを致します。此方もまだまだ五感プラス脳の細胞を活発に働かせながら、生涯学習の継続をやり抜くべく、覚悟を自身に言い聞かせて、取り組み中と言った所ですが、小生がまだ満30歳の時に氏と鈴木アナ他NHKの各職種代表の方々とTV開局20周年記念番組に、海外各地をおよそ3ヶ月半、同行取材をさせて頂けた事が、今だに懐かしく思い出されます。まだお元気な内に当時のスタッフの方々との会合があればと思っております。宜しくお願い申し上げます。

  2. 新保哲也 のコメント:

    突然のメールで失礼いたします。山崎俊一さんの連絡先を調べていたら、このホームページ
    があったので、メールしている次第です。
    友人が、ベトナムの知人から、「ベトナムの高僧ティック・ニャット・ティエン氏が11月に来日する際に、山崎俊一さんに会いたいので、連絡先を調べてほしい」と頼まれた件で、私にも相談があり、調べています。
    ティエン氏はベトナムで戦争孤児の孤児院院長をされていた方で、ベトナムでは著明な方とのことでした。
    お手数ですが、このメールを吉田さんに転送していただき、ティエン氏に会ってもよいということであれば、私までメールでお返事いただくことは可能でしょうか。恐縮ですが、よろしくお願い致します。
                      新保哲也

  3. 新保哲也 のコメント:

    突然のメールで失礼いたします。
    先ほどのメールで一部間違っていましたので、再送いたします。
    友人が、ベトナムの知人から、「ベトナムの高僧ティック・ニャット・ティエン氏が11月に来日する際に、山崎俊一さんに会いたいので、連絡先を調べてほしい」と頼まれた件で、私にも相談があり、調べています。
    ティエン氏は、ベトナムで戦争孤児の孤児院院長をしていたそうで、ベトナムでは著明な方とのことでした。
    お手数ですが、このメールを山崎さんに転送していただき、ティエン氏に会ってもよいということであれば、私までメールでお返事いただければ、幸いです。よろしくお願い致します。

                  新保哲也
    メールアドレス:tetsuyafaith@yahoo.co.jp

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