市村武彦さん「山に魅せられて」

(ネットワークNHK12月号から)

 広島勤務当時、先輩に誘われ四国の名峰・石鎚山のテント泊登山で頂上に立った時の達成感が、1山に魅せられた原点。本格的に登山に挑んだのは30代で、4泊5日の北アルプス縦走だったと市村さんは回想する。
 気候は夏、富山県側から有あり峰、更に雲ノ平~ 三俣蓮華岳~槍ヶ岳~上高地へとテント泊・小屋泊しながら踏破、稜線で望んだ絶景にすっかり山のとりこになったという。
  時には山を愛するが故の厳しい試練にも遭遇する。北海道幌尻岳(2052m)は深い渓谷に沿った谷川をジグザグに渡渉(※注)しながら登る難コース、かつては登山者の溺死事故もあった場所でもある。
 空港で乗り換えたレンタカーが林道でタイヤがパンク、登山口到着は予定を過ぎて夕刻、谷川を渡り始めて4回目の頃から雨がポツポツ降り出した、まだ渡渉が10回以上残2っているうえ、翌日の下山を考えると不安がよぎる。「迷ったら引き返す」という山のおきてもあり、撤退を決断する。最初の渡渉地点に戻った頃はすっかり夜の闇、雨も本降り、金色に光るキタキツネの眼光におびえたという。
 山に魅せられた市村さんは、日本百名山の完全征服を目標にしながら、海外の山にも挑み始める。ヒマラヤのネパールトレッキングに参加したほか、ボルネオ島のキナバル山、アフリカのキリマンジャロなど4000mから6000m級の山岳を踏破している。
 中でもフランスのモンブラン登頂は貴重な体験だったという。日本では事前に高山に
耐える体力作りを行い、八ヶ岳では雪山登山の訓練に臨んでいる。さて現地では、ガイ3ド役の若いフランス人とマンツーマン、ロープで身体をつなぎ急な岩場やとがった稜線を克服し、たどり着いた憧れのモンブラン、4810mの山頂、幸せな一瞬だったと眼を輝かす。このころには、目標にしていた日本百名山をほとんど踏破している。
退職後の市村さんは身近な山登りに軸足を置いて、山の仲間とのふれ合いや地元の登山クラブ40人との月例登山、NHK文化センター登山教室などでガイド役に徹して山歩きを応援している。
 かつては高山植物の可憐な花に向けていた愛用のカメラも、今では中高年の方々の屈託のない笑顔が中心だという市村さん、古希を過ぎても山への情熱は変わっていない。
(文・鳥取旧友会 上山 正一)

市村 武彦さん  昭和18(1943)年生。昭和36年入局。広島に配属の後、米子、鳥取、岡山などで、技術部門を中心に活躍。平成15年退職。

 

市村武彦さん「山に魅せられて」 への1件のフィードバック

  1. c-kaneda のコメント:

    11月上旬、2年前の夏のお花見登山に続いて今年は紅葉狩り登山でアーカイブスOB・OGが大山でまたまたお世話になりました。
     市村さんの山への心情の深さと知識の蓄積と経験の積み重ねには感服の至りです。
     今後とも東京連中が山陰へ来たら付き合ってやってください。感謝です!<金>

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です