川﨑 眞五郎さん「豆本は生涯の友『役に立たないものを大切に』の心」

(「ネットワークNHK」11月号から)

kawa1 「豆本」とはどんなものかご存じだろうか。書店で はほとんど扱っていないため、目にすることはめっ たにない。
豆本に明確な定義はないが、手のひらに納まる 程度の小さな本の総称である。豆本の歴史は古く、 西洋では 15 世紀中頃から、日本では江戸時代の 初め頃雛飾り用として作られ始め、今や世界各国 で刊行されるようになった。
そんな豆本と川﨑さんが出会ったのは 40 年ほど前。 仕事を引継いだ前任者の机の中からマッチ箱 半分ほどの銀行の宣伝用豆本を見つけたkawa2ことだった。 小さくても読めること や可愛らしくてぬくも りがあることに感動 し、それ以来蒐集を続け てきたという。古書店 を廻ったり、骨董店を 捜し歩き、蒐集した豆本 はおよそ2万冊にも 及ぶ。1565年に作ら れた哲学書から、ギネス ブックに登録されて いる最新の印刷技術で 作られた0.75ミリ 四方の本まで、古今東西 の豆本が揃っている。
その中でもお気に入りはシェイクスピア全 40 巻 (オーク材製の回転書棚入り)。総革装、金箔型押に 三方金が施された装丁が美しい。シェイクスピア 生誕450年祭にkawa3あわせ、成城大学図書館では同校 が収蔵する英国グローブ座(シェイクスピアの戯曲 が上演された劇場として知られる)の模型と一緒に 一か月間豆本展が開かれたという。
NHKサービスセンターでアーカイブスに 携わっていた頃、自治体から川﨑さんに子供たち への講演を依頼されることがあった。その際豆本の 話を間に挟むと、子供達が珍しがり最後まで 話を聞いてくれたという。豆本蒐集や研究は、 思わぬところでも役立った。
豆本文化を体系的に研究し続けてきた川﨑さんは 「実用性がなく、小さくて役に立たないものが 何故作られ集められるのか」を考えることはとて も大切だという。今年3月には、これまでの研究の 成果の集大成として530ページにも及ぶ大作 『豆本コレクションの研究』(私家版)にまとめあげた。
持ち運びの利便性から始まり、版元の趣向が 凝縮され、小ささこそを好む蒐集家によって受け 継がれてきた豆本。現在、川﨑さんはそれら豆本 の蔵書のデータベース化に取り組む。後世に残し ながら、文化としての豆本を若い人達にもっと知っ てもらい、より多くの方々の興味の対象として 広めていきたいと夢は膨らむ。
(文・東京旧友会 遠山 和良)


川﨑 眞五郎 (かわさき      しんごろう)さん         昭和18年生。昭和37年入局。 技術研究所、経理局、人事本部、番組制作局など で主に経理業務に従事。平成12年、定年退職 後、24年までNHKサービスセンター(アーカイ ブス)に勤務。

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