吉田茂彦さん「元アナウンサー、民話の語りは芦屋弁で! 」

(「ネットワークNHK」10月号から)

yosidaむかしから、芦屋の海は静かで、その沖は浅瀬で、魚をとるのにこの上なくええところやったんで、江戸時代のころから、地引網でイワシがたくさんとれとった。(中略)昼網というて、昼過ぎに網が上げられると浜は急に活気づく。(中略)魚ははかりにかけられて、その日のうちに町に売り出される。
「とれとれのイワシ、いらんかぇ~」
「ててかむイワシやでぇ~}
(三好美佐子著 あしやの民話「魚屋道(ととやみち)」から)

 6月のある日、兵庫県芦屋市の海に近い集会所で地区のお年寄りたちを招いて、地元に伝わる民話の朗読会が開かれました。演じているのは「あしや民話の会」の皆さん。この会は2002年に設立され、現在のメンバーは9人、子供やお年寄りを前に年に10回ほどの講演活動を行っています。
 アナウンサーの大先輩、吉田茂彦がこの会に参加するようになったのは今から3年yosida1前。最初は会のメンバーから「発音、発声の基礎を教えてほしい」とたのまれて裏で先生役を務めていただけだったのですが、会には男のメンバーが少なかったせいもあり、そのうち、「長者や欲張り爺さんの役はぜひ先生にお願いします」と頼まれ、いつの間にやら、会のユニホームである作務衣(さむえ)をきせられて演者の側に立っていたといいます。でも、吉田さん、「聞き手のお客さんの前に立つと、ついその気になってしまうのは、もうとっくに卒業したと思っていたアナウンサーの性なんでしょうね。気付けば、こちらを見つめ、うなずき、手をたたいてくれるお客さんに何とか応えようとがんばる自分がいました」とのこと。
 ところが、民話の語りは地元の芦屋弁で語ることになっています。共通語をたたきこまれてきたアナウンサーにとってはこれが一苦労。さらに吉田さんは、生まれ育った土地は関西ではありません。たとえば「川が山から海に流れる」というだけでも、「カワ」「ヤマ」「ウミ」のアクセントはそれぞれどう発音すればいいのか?もう大変。逆にメンバーに教えを請うことも多いといいます。
yosida2 それでも、長年の仕事で鍛えた声は83歳の今も決して衰えておらず、マイクも通さないのに会場の隅々まで伝わるのはさすがです。この日も、会場にやって来た50人ほどのお年寄りから大きな拍手を受けていました。吉田さんは「北海道から九州まで協会生活で10回を数える転勤を繰り返してきて、20年前にやっと芦屋の地に住み着きました。この地を「終の棲家」(ついのすみか)と考えています。残された人生をしっかりと地元に根を下ろしてくらしていきたい」と元気に話していました。
(文・近畿旧友会 酒井 茂樹)

吉田 茂彦さん 昭和8年生まれ。昭和34年アナウンサーとして入局。函館を振り出しに、松本、大阪、宮崎、旭川、盛岡、京都など全国各地で活躍。平成10年退職。

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